マンモグラフィ検診の意義
高井クリニック院長 高井良樹
乳がんは激増しています
乳がんは乳房の中の母乳を作るところ(小葉組織)や母乳を乳頭まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍です.我が国の乳がんの患者数は年々増加し,1996年には日本女性がかかる悪性腫瘍で第1位になりました.現在毎年5万人近い女性が乳がんにかかっており,これは,日本女性の約20人に1人が生涯の間に乳がんにかかることを意味します.乳がんの発症しやすい年齢は40~70歳ですが,20歳過ぎから認められ,30歳代ではさらに増え,40歳後半から50歳代前半にピークを迎えます.乳がん死亡者数は増加の一途をたどり,2000年には約9200人が亡くなりました.米国では乳がんにかかる方の割合は女性8人に1人と極めて高く,さらに増加していますが,死亡率(乳がんで亡くなる方の割合)は減少傾向にあります.しかし,我が国では乳がんによる死亡率も増加しています.
マンモグラフィ検診
それではなぜ米国の死亡率が減少しているのでしょうか.それは,マンモグラフィ検診の普及や,啓蒙運動により早期に乳がんを発見・治療できるようになったからです.乳がんは早期に発見して適切な治療を行えば十分に治る病気です.早期に発見すれば乳房も命も失うことはありません。我が国の乳がん検診は,従来,問診と視触診による方法で行われていました.しかし,この検診法で早期の乳がんを発見するには限界があります.平成15年,厚生労働省乳のがん検診に関する検討会では,老人保健事業に基づく乳がん検診の見直しを行い,乳がん検診はマンモグラフィによる検診を原則としました.富岡市でも平成17年度から医師会が中心になりマンモグラフィを併用した個別を開始しました.現在個別検診,集団検診ともに視触診とマンモグラフィを併用して検診を行っています.またこれを機会に医師会では乳腺甲状腺研究会を立ち上げ,毎月,症例検討会を行い,視触診所見やマンモグラフィ・乳腺超音波所見の読み方について検討する実践的な勉強会を行っています。
マンモグラフィってどんな検査
マンモグラフィは乳房専用のレントゲン検査です.透明の圧迫板で乳房をはさみ,薄く引き延ばして撮影します.上下からはさんで1回,左右からはさんで1回を左右の乳房で計4回撮影します.マンモグラフィは,触診ではわからないような早期の小さな乳がんの発見が可能であるとともに,腫瘤を作らない乳がんを,乳がんの初期症状のひとつである「微細石灰化」で映し出すことができる優れた検査です.マンモグラフィを導入することでより早期の乳がんが発見できるのです.
マンモグラフィ検診を受けましょう
現在,群馬県での実際の検診受診者は,対象女性の20~30%でありそのうちマンモグラフィ検診を受ける人は15%程度です。欧米の受診率70~80%と比べると遙かに低いのが現状です。検診による乳がん死亡率を低下させるためには、対象者の50%以上に検診を受けて頂かなくてはなりません。
乳がんから身を守るために
現在,乳がんは非常に増えておりますが,早期に発見し,適切な治療を施すことにより、90%の方を救命できます。また早期発見することで乳房を失うことなく治療できる可能性が大変高くなります.つまり,早くみつければ,乳がんで命を落とすことも,乳房を失うこともないのです.
30歳を過ぎたら,自己検診(月1回)を行い,定期的なマンモグラフィ検診を乳腺専門医で受けましょう.乳房に異常を感じたら乳腺専門医を受診しましょう.